GPIF理事長の講演録~「会計・監査ジャーナル」2024年4月号~
- 佐藤篤
- 2024年4月23日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2024年4月号に「資本市場の持続的な成長とGPIFの役割」と題された、宮園雅敬GPIF理事長の講演録が掲載されておりました。
GPIFについては、年金の運用をやっていること、その運用も自ら行うのではなく、運用機関に委託して行っていること程度の知識しかなかったこともあって、面白く読むことができました。
以下メモ書きです。
役割
これまで収められた保険料のうち年金の支払いなどに充てられなかったお金を年金積立金として預かり、将来世代のために運用して増やすことがGPIFの任務。
年金積立金は2019年3月末の159兆円から、長期にわたり継続的に積み上がっていく見通し。2079年に479兆円というピークを迎えるまで増え続け、その後、年金支給財源として順次取り崩されていくという想定。従って今後50年以上は基本的にキャッシュアウトがないという前提に基づいた長期運用を行っていく役目を担う。
運用実績
2001年から2023年12月まで累積で126兆6,826億円の運用収益を上げている。
運用資産額は219兆3,000億円にまで増えている。
国内の金利低下によって国内債券の利回りが低下している状況などに伴い、国内債券の割合が減少した一方、相対的に金利が高い外国債券の割合が増加している。
制度上の制約
1.他事考慮の禁止
運用は「専ら被保険者の経済的利益のため」という目的から離れて、他の政策目的や施策実現のために行うことができない。
2.投資一任契約
株式運用においては、個別の銘柄選択や指示はできない。
ESG・スチュワードシップ活動
GPIFは、100年を視野に入れた超長期投資家であることから、上記の制約範囲の中で、ESG活動を推進している。
アクティブファンドは運用規模が過大になると超過収益の獲得が難しくなる傾向があることから、GPIFはパッシブ運用を中心に据えており、パッシブ運用機関に対して、投資先企業とのエンゲージメントを促進する取り組みを行っている。
GPIFが運用機関を採用する際の採用条件や、採用後の評価項目のうち、「スチュワードシップ責任」に30%の比重を置いている。これは評価項目中でも決して低くない比率である。
投資対象銘柄が多いパッシブ運用機関がエンゲージメントを行うことは多額のコストがかかることから、従来と異なる報酬を支払うという特約を付与した「エンゲージメント強化型パッシブファンド」を設定している。
感想
今後50年はキャッシュアウトがない(予定)ということに驚きました。これは団塊世代への給付もCPIFの運用資産を取り崩すことなく乗り切れるということですから、少し安心していいのかも知れません。
ただ、「他事考慮の禁止」を骨抜きにしようと企んでいる人達も少なからずいるでしょうから、油断は禁物ですが。
そういう意味では、宮園理事長を始めGPIFの皆さんのご苦労は相当なものと想像されますが、是非頑張っていただきたいものです。
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