新リース会計基準対応における契約管理上の留意点~「企業会計」2025年2月号~
- 佐藤篤
- 3月11日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2025年2月号の特別企画は「”リース”を探せ!新リース会計基準適用はじめの一歩」でした。
その中の「増大する契約管理に求められる管理手法」(巽俊介)が実務的な内容で参考になりました。
簡便処理
旧基準ではリース資産総額に対して重要性が乏しいと認められる場合、割引計算は不要とする簡便処理が認められている。
「重要性が乏しいと認められる場合」とは、「未経過の期末リース料残高が、未経過の期末リース料残高+有。形及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合の10%未満である場合」である
新基準にも同様の規定は存在するが、以下の理由から、割引計算が必要となる企業が増えると予想される。
不動産賃貸借契約等オンバランスの範囲が広がること
リース期間の定義が変わり、自動更新などにより「延長」する可能性が高い場合には、契約での取決めよりも長い期間にわたってリース負債を計算することになり、未経過リース料残高が大きく増加すること
契約変更
契約期間中にリース料やリース期間など、当初の見積金額に対して変更があった場合、新基準ではその時点でリース負債の再測定の会計処理を要求している(旧基準にはない)。
例えば賃料交渉において、賃料が減額となった場合、新基準では賃料減額の合意に伴い、リース負債を減額する会計処理が必要となる。
新規契約における留意事項
新基準での「リース期間」は、「契約期間」とは必ずしも一致しない(延長・解約オプション)。
様々な支払いパターンへの対応と割引計算の対応(不動産リースにおけるフリーレントや段階的な賃料変動等)
契約解約・満了時における留意事項
除却処理漏れを防ぐための業務設計が必要
スプレッドシート管理
旧基準ではオンバランスの対象となる物件数が少なかったことにより、スプレッドシートを利用して対応するケースが多かったと考えられるが、新基準への対応を想定した場合、スプレッドシート管理の課題として以下の3つがあげられる。
計算が旧基準よりも煩雑となる(上記契約変更時の対応他)
属人性があり、継続した維持管理や引継ぎが難しい。また、信頼性は担当者に依存することになる。
誤謬発生リスク、データ保存、アクセス権限等の安全性の問題が、取引量増大により顕在化しやすい。
契約の台帳管理
不動産賃貸借契約の台帳管理ができていないケースが多い。
経理部門以外で一覧管理がなされていても、管理目的がそもそも異なるため、延長オプション期間など契約書に記載のない会計処理に必要な項目まで管理できていない。そのため、新基準対応には経理部門が中心となって台帳を整備・管理する必要がある。
台帳メンテナンスにおいては、経理部が四半期などの定期的なタイミングで現場に契約の増減情報を確認し、その結果を管理しているケースが多い。その理由は、現場部門ではリース会計の制度に関する理解が難しく、適切なデータが上がりにくいためである。
感想
著者の方はシステム会社の方なので、その点は考慮した上で読む必要はありますが、IFRS第16号適用時の経験に基づく内容で、なるほどと思わされました。
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