リース会計の改正論点~リースの識別とリース期間の決定~「企業会計」2021年11月号
- 佐藤篤
- 2021年12月7日
- 読了時間: 2分
更新日:2022年6月26日
「企業会計」2021年11月号において「新たなリース会計基準5つの論点」という特集が組まれていました。その内の一記事「リースの識別とリース期間」(以下「当記事」)を読んでみました。
そもそもとして、IFRS第16号「リース」ではファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引との分類区分をなくし、広く解約不能のリース取引等を使用権資産として計上することを求めており、日本基準もそれに沿った形での改正がなされることになります。
それを踏まえて、以下、「リースの識別」と「リース期間の決定」の論点に簡単に触れます。
リースの識別
無形固定資産(特にソフトウェア)については改正基準での取扱において、適用除外や任意適用等いくつかの選択肢があり得る。
現在検討中の日本基準の改正作業においては、「簡潔で利便性が高い」という改正方針を掲げている。対してIFRSではリースの識別に関して詳細なガイダンスを定めており、それを全て日本基準に取り入れると当該改正方針に反してしまうし、一部のみ取り入れるとリースの識別の評価結果がIFRS第16号とかなり異なってしまう可能性が生じる。
IFRS第16号の設例を見ると、リースを含むか含まないかの判断の分かれ目は微妙で、実務上のバラツキが出やすい。
リース期間の決定
IFRS第16号では、リースの開始日において、借手によるリースを延長するオプションを行使すること、またはリースを解約するオプションを行使しないことが「合理的に確実」であるかどうかを評価する必要があるが、その際、オプションの行使(又は非行使)についての経済的インセンティブを生じさせる全ての関連性のある事実及び状況を考慮するとされている。
この点について提起されている懸念は以下の通り。
「合理的に確実」の判断にバラツキが生じる懸念
過去実績に偏ることの懸念
貸手からは借手のオプションの行使又は非行使の評価は困難
不動産業、小売業で見積もりが困難な場合がある
当記事から受ける全体的な印象としては、実務的にバラツキが出やすい基準になりかねないという懸念が感じられました。当記事の著者である小宮山賢先生は数値基準を設けるのも一案と記述されています。
現行日本基準でもまさにその実務上のバラツキに配慮して数値基準が設けられている訳でして、実務サイドとしてもその方がありがたいと感じる次第です。
次回以降も、この特集記事について取り上げたいと思います。
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