買掛金の残高確認
- 佐藤篤
- 2020年12月3日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年6月22日
金融庁のホームページに令和2年11月27日付けで監査法人及び公認会計士の懲戒処分等についての公表が出ておりました。当該監査法人はすでに清算法人に移行しているようですが、一方で公認会計士2名の処分については、1名の方は登録抹消、もう1名の方は業務停止2年ととても厳しい処分が下されておりました。業務停止はまだしも、登録抹消という処分はほとんど記憶がありません。
その厳しい処分となった要因についても当該公表内容に様々な記載がなされておりましたが、その一つとして買掛金に対する監査手続に係る記載がありました。要旨としては、買掛金残高が大幅に減少していることを認識しつつも監査手続が不十分だったということのようです。
買掛金の監査上のポイントは、計上されている債務が正しい金額かどうかももちろん大事なのですが、それ以上に網羅的に計上されているか、つまり計上されるべき債務が簿外になっておらず全て計上されているか、というところが最も大事なポイントになります。
そのための監査手続としては、取引先から送付されてきた請求書綴りを閲覧して計上漏れの有無を確認する他、取引先への残高確認も行われることがあります。
但し、買掛金を対象とした残高確認を行う場合、売掛金とは少々アプローチが異なります。
売掛金の残高確認の場合、その実施目的の多くは売上の過大計上や架空計上の検出であるため、売掛金の取引先別残高明細からサンプリングすれば十分目的を達成できます。
一方で計上漏れの検出を目的に行われる買掛金の残高確認の場合、取引先別残高明細に計上されている大口仕入先を対象に残高確認を行うだけでは不十分で、例えば1か月前や3ヶ月前、1年前には多額の買掛金が計上されていたにも関わらず、期末になって大幅に減少もしくはゼロとなっているところをあえて抽出して残高確認を行うことが、その目的に適うことになります。特に残高がゼロになっていると、取引先別残高明細からそもそもその取引先自体が消えていることもあり、注意が必要です。
また、実務上は買掛金の取引先別残高明細を入手して監査がスタートするのが期末日から2~3週間後位になりますが、そのタイミングで慎重に残高確認状の発送先を選定しておかないと、例えば監査報告書日付の5日前に主要な仕入先の残高が大きく減少していることに気付いて残高確認状の追加発送を行っても、監査報告書日までに回収・検討できない可能性が高く、結果、他の証拠力の弱い監査手続に依拠せざるを得なくなります。
このような状況は期末監査時の大きなストレスの一つで、会計監査人としては起こらないことを願うばかりなのです。
コメント