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研究開発に係る無形資産~中外製薬㈱のKAM~

  • 佐藤篤
  • 2022年3月29日
  • 読了時間: 2分

訳あって中外製薬株式会社(以下「中外製薬社」)の2021年12月期の有価証券報告書を見ていたのですが、そこに添付されている監査報告書に「利用可能でない製品関連無形資産の減損の判定に関連する製品化の可否に関する判断の妥当性」と題されたKAMが記載されていました。


直感的にIFRSの研究と開発の区分に関する論点なのかと思ったのですが、内容的には進行中の研究開発資産とのことで、よく読んでみると単純にIFRS無形資産の認識要件を満たすか否かの論点のようで、会計方針には以下のように記載されています。


当該研究開発が最終的に製品になるかどうかの不確実性は存在したとしても、当社グループによって支配されており、且つ単独で識別可能で、将来の経済的便益の流入が期待されます。したがって、承認前の医薬品や化合物に係る第三者への契約一時金やマイルストンの支払は、無形資産として認識しております。



IFRSで無形資産を計上するためには支配の存在と識別可能性という要件を満たし、且つ将来の経済的便益が流入する可能性が高いこと、及び取得原価を信頼性をもって測定できることが必要になります。

この点、中外製薬社のケースは個別に対価を支払って取得されており取得原価の算定に信頼性を損なう要素はなく、且つ取得に際しては当然将来の経済的便益の流入可能性が高いと判断しているはずですから、自動的に無形資産計上の要件を満たすことになります。


一方で「最終的に製品になるかどうかの不確実性は存在」すると中外製薬社自ら認めている以上、会計監査人としては監査上のスコープを高めない訳にはいきませんから、監査報告書上KAMとして記載したということになります。


余談ですが、中外製薬社の当該支出に関しては、日本基準であれば研究開発費として発生時に全額費用処理することになるかと思います。もちろん詳細を把握している訳ではないので断言は出来ませんが。

のれんの非償却だけでなく、無形資産の認識要件も、特に研究開発が主体の企業では、IFRSが選好される要因の一つになりそうです。


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