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決算月変更雑感~株式会社ニトリホールディングス~

  • 佐藤篤
  • 2022年4月5日
  • 読了時間: 3分

かなり前のことになりますが、サイボウズ株式会社の青野社長が、自分が社長のうちに赤字決算を出しておきたかったという趣旨のことを仰って、実際に赤字決算を出したことがありました。

ネットで調べてみたところ、2015年12月期決算のことでした。

青野社長については、著書である「ちょいデキ!」(文春新書)を読んだことがあり、見識のある方だなあという印象を持っていたことと併せて、この2015年12月期の赤字決算のエピソードについても印象に残っています。


なぜこんなこと書いているかと言うと、株式会社ニトリホールディングス(以下「ニトリHD社」)が2022年3月31日に発表した2022年2月期の決算短信で、進行期である2022年度の決算月を2月から3月決算に変更して13か月決算とすることで、36期連続増収増益予想としていると話題になっていたからです。

実際決算短信を確認してみたのですが、確かに決算期が3月に変更される旨の記載があり、2023年3月期予想も増収増益となっておりました。


最近は円安も急速に進み、ウッドショックはじめ原材料高も重なり、輸入企業であるニトリHD社には厳しい状況です。

また、ニトリHD社の海外売上高比率は決算短信等からはわかりませんでしたが、ニトリ事業の2022年2月20日時点の店舗数は745店、その内93店が海外店舗のようで、そこから判断すると海外売上高比率は高くないと考えられ、連結売上高への円安の効果は少なそうです。

加えてコロナによる巣ごもり需要も一段落し、現在のニトリHD社の経営環境は厳しいと言って差し支えないと思います。


そもそもニトリHD社の決算月変更が36期連続増収増益のためとは限りませんが、もしそうだとすると、会計監査人は気が抜けないだろうなと想像します。

経営者にとって赤字決算も減収減益決算も嫌に決まっているのですが、経営環境の悪い時にダウンサイドの決算を許容できるか否かというのは経営者の考え方による点が大きく、それを許容できない経営者は所謂不正会計をするリスクが高いと会計監査人は判断せざるを得なくなるからです。


今回のニトリHD社のケースは赤字決算でも何でもなく、且つ増収増益に拘っているのかどうかも不明ですが、仮にそうだとすると、決算期変更という方法は何度も使える訳ではありませんから、会計監査人は今後それ相応の厳しさの監査計画を立案し実行していくことになるのではないかと思われます。


サイボウズ社の青野社長のように、経営環境が悪い時に減収減益決算や赤字決算を許容できる経営者の方が優れているという話ではなく、あくまで会計監査人として監査しやすいかどうかという話でありまして、ニトリHD社の経営者が優秀な方々であることに疑いはありません。


余談ですが、ニトリ創業者である似鳥昭雄氏の「私の履歴書」はとても面白く、単行本になっていますので、一読をおすすめ致します。

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