決算内容を予見させた(?)寄稿~「企業会計」2022年7月号~
- 佐藤篤
- 2022年8月12日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2022年7月号にソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG社」)の取締役専務執行役員CFO兼CISO兼CSusOである後藤芳光氏が寄稿されていたのですが、今回の決算を暗示したかの様な内容でありました。
SBG社は2022年8月8日に2023年3月期第1四半期決算を発表しました。
最終損益(親会社の所有者に帰属する純利益)が3兆1627億円の損失になったとのことで、ニュースでも話題になりました。
当該損失は投資の未実現損失によるもので、キャッシュアウトを伴う訳ではないため、金額から受けるほどの経営へのダメージはないのですが、それを差し引いても大きなインパクトでした。
で、冒頭に記載した後藤氏の寄稿ですが、「連結財務諸表ではわからない真の企業評価」と題されており、これだけをみても近々発表される決算数値は良くないであろうことが嗅ぎ取れそうです(「企業会計」2022年7月号は6月2日発売)。
内容については以下に概要を抜き出してみます。
SBG社は「投資会社」であり、連結財務諸表の数字を見ても、実態と大きく乖離した姿しか見えてこない。
SBG社は一般的な会社が重視する会計上の利益を経営上重要な指標とはしておらず、保有株式の時価から純有利子負債を差し引いた数値であるNAV(Net Asset Value/時価純資産)を最重要指標としている。
連結財務諸表上、連結子会社や持分法適用会社(ソフトバンク㈱、アーム、アリババなど)の保有株式は時価評価されないため、NAVは表れない。
投資会社として財務健全性を外部に示すことも重要と考えており、以下の二つの財務規律を設けている。
保有株式価値に対する純有利子負債の比率であるLTV(Loan To Value)を通常時には25%未満で運用する。
今後2年間の社債償還資金を超える手元流動性を維持する。
連結財務諸表は共通ルール(GAAP)に基づいて作成されることで異業種間の比較を可能にするという意味で重要であることは認める。
しかし、個々の企業の真の価値を図るためには、連結財務諸表上の各数値に加え、それぞれの業種・業態に応じた経営・財務安全性指標を持つことが極めて重要である。
悪意的に解釈すれば、来るべき決算が悪いことへの事前の言い訳と読めなくもないですが、仰っていることは御尤もですし、理解できます。
そして、後藤氏の主張は投資家も分かっていたと思います。
その証拠に時価総額6兆円の会社で3兆円の最終損失を出したら株価は半値まで売り込まれてもおかしくありませんが、決算発表翌日である8月9日の取引ではストップ安にすらなりませんでした。
ただ、ニュースにする方は見た目のインパクトで大きく騒ぎ立てますし、会計に詳しくない人は他業種の決算数値と同じようにそのニュースを受け取ってしまいます。
そういった意味では、SBG社は気の毒だと思いますし、事前にこのような寄稿をしておくことも必要なことなのかも知れません。
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