客観性を阻害する様々なバイアス~「会計・監査ジャーナル」2024年5月号~
- 佐藤篤
- 2024年5月21日
- 読了時間: 3分
「会計・監査ジャーナル」2024年5月号の連載「公認不正検査士の不正調査手法」は「客観性とバイアス〜専門能力を支える心理学的知見」(伍井和夫)でした。
当該記事の目的については、以下のように述べられています。
本稿はバイアスの仕組みを正しく理解し、それをもって、バイアスに起因するリスクに適切に対応する方法を身につけることの一助になることを目的とする。
我々が人間である以上バイアスから完全にフリーになることは不可能である一方、バイアスそれ自体には一定の合理性があり、そうなる必要もないのですが、ある特定の状況においてはバイアスの存在が大きな障害となりうることは事実で、そもそもどのようなバイアスがあるのかを把握しておくことは、仕事に限らず、生きていく上で大いに有用です。
そんな訳で、当該記事の中から、様々なバイアスについての説明部分のメモ書きを記しておきたいと思います。
想起の容易性
人にとっては鮮明で新しい出来事ほど思い出しやすいので、それらは思い出しにくい出来事よりも発生しやすいと判断してしまう。
記憶構造に基づく検索容易性
自分の利用可能な記憶が、自分の経験の及ばない広い世の中の出来事まで正確に反映していると一方的に思い込んでしまう。
基準比率の無視
ある事象が起こる確率を推定する時に、その事象に関する他の記述を目にすると、たとえその情報が確実に無関係であっても影響を受けて、基準比率を無視して推定してしまう。
サンプルサイズの無視
正確な予測にはサンプルサイズが決定的に重要な意味を持つにもかかわらず、自身の期待や都合を優先して、それを無視してしまう。
確証バイアスの罠
人は自分が正しいと思っていることを追認するような情報を探しがちであり、その反証になるような情報の検索は不得手。
アンカリング効果
人が何かの値を見積る時には、まず何らかの値を起点(アンカー)に定める。過去の出来事であれ、全く無関係の値であれ、利用可能な情報であれば何でもそのアンカーになる。次にアンカーから始めて頃合いと思われるところまで見積りが調整されるが、その調整はアンカーからあまり離れることなく不十分なところで止まってしまう。
コミットメント効果
人前で「やる」と言ったら、引っ込みがつかなくなる。
コミットされた行動や決定は、変更や撤回が困難になる。
意見の公的表明や意思表示の署名などの行為によってコミットメントは増大し、その結果、自身の立場が攻撃されても説得の影響を受けにくくなる。
説得に反して、従来の立場をより極端化することもある。
感想
私自身どれもこれもやっちゃっているなあ、と改めて気付かされました。
最近も設備投資に関してコミットメント効果の事例に該当する話を聞き、他人事ながらどうするのだろうと思っていたところです。
つくづく世の中巧妙だなあ、と実感させられます。
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