システム障害発生時の会計・開示のポイント~「企業会計」2024年9月号~
- 佐藤篤
- 2024年9月20日
- 読了時間: 3分
「企業会計」2024年9月号に掲載されていた「システム障害発生時の会計・開示のポイント」(原幹)を読んでみました。
当該論考の目的については以下のように記載されています。
本稿では、これら(注;システム障害)の事業リスクに経理部門・開示部門として適切に対処し、安定的にサービスを提供しつつビジネスリスクを低減するために留意する点について考察する。
以下、メモ書きです。
基幹系システム
一般的には「その会社のビジネスに直結する業務機能に関連する情報システム」と定義される。
会社のビジネスの基幹を維持するシステムであることから、常に安定的な稼働と業務サービスの提供が要求される。
ライフサイクルが比較的長いのが特徴で、短い場合で数年、長い場合は10年超に亘って運用される。そのため「レガシーIT資産」になりやすいという特性がある。
特に可用性についての高い要求があり、堅牢なセキュリティを担保したシステム維持管理が求められる。
2025年の崖
「複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システム(注;レガシーIT資産)が残存した場合、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある。」(2018年経済産業省公表資料より)
2030年のIT人材の受給ギャップは、16万人から78万人の不足と予想されている。
システム障害にかかる会計処理
1.障害の影響範囲の見積り
追加的に発生する社内及び社外人件費
ベンダーに支払う追加対応コスト
逸失利益に対する顧客へのペナルティ
2.偶発事象
システム障害に関連した取引先からの訴訟の提起
3.減損
対象システムにおけるソフトウェア資産が属する資産グループにおいて正味現在価値の評価に影響を及ぼすと判断される場合に判定を実施する。
過去の事案からの示唆
初動の情報共有をスピーディーに行う。
会計システムにおいて障害が発生した場合には、開示・監査対応・株主総会対応など、広範に影響が及ぶ。
障害の影響が定量化できたタイミングに合わせ、可能な限り早いタイミングで決算発表や各種の開示といったイベントを通じて利害関係者へのタイムリーな情報共有を図る。
基幹系システムが使用できない状況における代替的運用(手動の入力処理等)の想定を事前に十分に検討する。
障害の影響を見積るにあたっては、自社のみならず、サプライチェーン全体に配置される各社への影響を広く想定する。
感想
長年会計監査に携わっていると、驚くような古いシステムが現役で稼働し続けている会社に出くわすことがあり、基幹系システムがレガシー化しやすいという話は実感できるところです。
IT人材の不足については、それこそAIで代替させるべきなのだろうと思うのですが、エンジニアが自分の仕事を奪われるようなシステムを開発するはずもなく、恐らく当面解決しないだろうと想像します。
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