アクティビストの資産科目の見方~「企業会計」2026年2月号~
- 3月10日
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「企業会計」2026年2月号の特別企画は「財務指標をどう読むか?アクティビストの眼」でした。
その中から今回は「PBR改善へのバランスシート分析」(古木謙太郎)を取り上げます。
当該論考の目的は以下のように記されています。
本稿は、資本効率性の代表的な指標であるROEと、ROEを株主資本コストで除すことにより算出されるPBRを軸に、アクティビストが財務分析において注目する財務指標と分析の視点、それらを要求・提案に結びつける論理について論じる。
上記の目的から、当該論考では資産、負債と資本のミックス、不要な資産の売却と余剰資本の使い道といった章立てになっているのですが、当エントリーでは資産に関する部分にだけ触れます。
現預金
アクティビストが最も注目する資産の一つ
全ての資産の保有には調達資本に応じた資本コストが伴うため、過剰な現預金は資本効率性を悪化させる要因とみなされる
現預金が積み上がった企業、キャッシュ・フローが潤沢な企業、多額の設備投資を継続的に必要としない企業が積極的な成長投資や株主還元を行わない場合、アクティビストの注目を集める可能性がある
企業が保有する現預金の適正性は、必要な運転資金、成長投資の原資、不測の事態に対するリスク対応資金などの保有目的に応じてその規模と正当性が評価され、その際、コミットメントラインの有無や条件も判断の材料とされる
アクティビストは、今後のキャッシュインとキャッシュアウトの計画や評価を踏まえて将来の現預金残高を予想しているため、その適正性の判断は、現在の状況だけでなく、将来の見通しを踏まえて行われるのが一般的
政策保有株式
以下の理由から望ましくないとされる
事業上のメリットの不透明性
キャピタル・アロケーションの歪みと柔軟性の低下
資本収益性の低下
企業が本来負うべきでない市場リスクへの固定的なエクスポージャー
資本市場による監視機能低下の懸念
アクティビストが政策保有株式の残高が過剰か否かを判断する基準として、議決権行使助言会社であるインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)の基準が参照されるケースがある。ISSは、資産の20%以上の政策保有株式を過度な保有と判断している。
政策保有株式以外の有価証券
余資運用の一環として投資された国債・社債・投資ファンドなど
一般的に、アクティビストを含む機関投資家は、以下の理由から、企業に有価証券投資による収益の創出を期待していないし、合理的な企業行動とみなさない
安全性の高い有価証券から得られるリターンは、資本コストを下回る可能性が高い
高いリターンが期待される有価証券への投資は、本来企業が負うべきではない市場リスクを負う
海外子会社が保有する現地通貨建ての現預金を本国に送金せず、現地にて有価証券で運用するケースがあるが、その規模が過大または保有期間が長期に及ぶ場合、不要な資産と判断される可能性がある
不動産
アクティビストは不動産鑑定業者などを利用しながら、企業が保有する不動産物件を時価評価した上で、その価値に見合う収益を創出しているかを分析・評価する
本業のボラティリティが高い企業が収益の安定化を目的として不動産事業を営むことがあるが、こうした発想はアクティビストには支持されにくい
本業で使用される不動産についても、資産価値に見合う収益が創出されているかが判断される(例えば、地価の高い都心エリアに工場を有している場合)
親会社に対する預金・貸付金
親会社に対する預け金及び貸付金から得られる受取利息が資本コストを大幅に下回る場合、少数株主利益に影響を及ぼすガバナンス上の問題として、アクティビストの関心が特に高くなる
その他の資産
バランスシート上の流動資産や固定資産の「その他」が過大、または急激に増加する場合、アクティビストの注目を集める可能性がある
感想
いずれも至って常識的な内容だと感じました。
会計監査上も上記のような経済的合理性を欠いた資産への投資については、そこに至った経緯等に十分留意する必要があり、気が抜けない部分です。
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