PIEの非保証業務に係る監査役等の「事前の了解」をどうするか~「企業会計」2024年2月号~
- 佐藤篤
- 2024年3月8日
- 読了時間: 3分
冒頭から引用です。
監査業務の依頼人である会社がPIEである場合に、監査人である会計事務所等は、当該会社、その子会社又は親会社等に非保証業務を提供する場合には、監査役等に対して情報提供を行った上で、事前に了解を得なければならないこととされました。(「日本公認会計士協会「倫理規則」の改正を踏まえた監査役等の実務に関するQ&A集」より)
以前、弊ブログでも倫理規則改正に関する企業側の懸念を取り上げていますが、その中でも特にこの監査役等の事前承認が大きな懸念事項であるように感じられました。
そんな訳で、この「事前に了解」を実務上はどうしたらよいのか、「企業会計」2024年2月号の特別企画『会計士・監査役が知っておきたい倫理規則改正による非保証業務対応「監査役等としての対応」』(塚本英巨)を読んでみました。
以下、その一部のメモ書きです。
事前の了解の2パターン
非保証業務に対する監査役等の了解は、必ず非保証業務が提供される前(「事前」)でなければならない。
この了解のプロセスとしては、非保証業務の類型ごとに、包括了解のプロセスと個別了解のプロセスの2つを設けることが一般的になるのではないかと思われる。
包括了解のプロセス
非保証業務の類型から、一般的・抽象的に、監査人の独立性を損なわないと認められるものについて、監査人が「事前了解リスト」の案といったものを作成し、監査役等が当該「事前了解リスト」を事前に了解することをもって、当該「事前了解リスト」に掲載されている類型の非保証業務について、事前の了解が得られていることとするプロセス。
監査人の独立性を損なわないと一般的・抽象的に認められるとは言い難い非保証業務は「事前了解リスト」に含めず、個別了解とするのが適切。
「事前了解リスト」に掲載されている非保証業務の類型の中に、監査人の独立性を損なわないと一般的・抽象的に認めてよいか疑念があるものが含まれる場合には、個別了解の対象とすることを求めるべき。
少なくとも年1回は「事前了解リスト」の了解(監査役会、監査等委員会または監査委員会の決議)を得ることとすべき。
個別了解のプロセス
「事前了解リスト」に掲載されている類型の非保証業務に該当しない特定の非保証業務について、その提供にかかる契約の締結の都度、監査役等の了解を得るプロセス。
一般的・抽象的に、監査人の独立性を損なわないとの判断をすることが難しい非保証業務の他、監査人が、事業年度の開始時等に監査役等の了解を求めるにあたって想定していなかった非保証業務が対象。
慎重な検討を要するという観点からすれば、個別了解の対象となる非保証業務こそ、監査役会等(監査役会、監査等委員会または監査委員会)での審議を経てその決議によって了解することとするのが適切だが、監査役会等の決議は書面決議が認められていないため、緊急を要する場合の対応が問題となる。係る場合に備えて、常勤の監査役または監査(等)委員が個別了解することができることとするという例外を設けることも一考。
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