IFRS第18号には何故MPMに関する規定が設けられたのか~「企業会計」2024年9月号~
- 佐藤篤
- 2024年10月1日
- 読了時間: 2分
「企業会計」2024年9月号はIFRS第18号の特集でした。
前回のエントリーでは、為替差損益とデリバティブ損益の取扱いを取り上げましたが、今回はMPMです。
まずはMPMの概要について、以下「経営者が定義した業績指標(MPM)の開示」(物井一真、加藤大輔)からのメモ書きです。
MPMとは
Management-defined performance measures、経営者が定義した業績指標のこと。
全ての指標が今回の改訂の対象となる訳ではなく、一定の要件を満たすものが注記の対象となる。
一方、財務諸表外での一般とのコミュニケーションにおいて使用されている収益および費用の小計は、反証しない限り、企業全体としての財務業績に関する経営者の見方を伝えるものと推定するという規定が導入されている。
MPMの要件
収益および費用の小計であること
財務諸表外での一般とのコミュニケーションにおいて使用されていること
IFRS第18号がMPMに該当しないと定めている小計に該当しないこと
MPMについて要求される開示
MPMの計算方法
MPMによって伝えられる財務業績の一側面についての経営者の見方の記述
IFRS会計基準で規定されている小計との調整表。税効果および非支配持分への影響の開示、さらには税効果の算定方法についても開示することが求められている。
MPMに係るIFRS第18号の概要は上記の通りですが、そもそも何故係る規定が設定されるに至ったのかについて、以下「Non-GAAP指標用途の多様化と新たな課題」(中條祐介)からのメモ書きです。
Non-GAAP指標の問題点
GAAPに準拠しておらず、監査対象でもないことから、信頼性に問題がある。
企業間の比較可能性が担保されていない。
同一企業であっても、計算方法が変わる場合もあり、時系列での比較可能性についても担保されているわけではない。
直接的に比較可能なGAAP指標との調整表が示されない場合は、その透明性が大きく低下する。
Non-GAAP指標は、直接的に比較可能なGAAP指標に比べて良好な業績を表示することが多いという傾向がある。この点、Non-GAAP指標が役員報酬の決定要素に組み込まれる場合に顕著と認められる研究結果がある。
感想
IFRS第18号にMPMに関する規定が設けられたのは、結局のところ、MPMを監査対象とすることで信頼性を高めるためようです。
コーポレートガバナンスの観点からすれば、日本基準でも同様の基準を設けて監査対象とすべきだろうと思います。
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